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東京地方裁判所 平成6年(ワ)17022号 判決

原告

遠藤久美子

ほか二名

被告

小杉清

ほか五名

主文

一  被告らは、各自、原告遠藤久美子に対し、金一四〇万七三八七円、原告関田彩子及び同遠藤幹生に対し、それぞれ金七〇万三六九三円及びこれらに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告小杉清、同有限会社五十沢温泉湯元館及び同椎名茂子は、各自、原告遠藤久美子に対し、金二八一万四七七六円、原告関田彩子及び同遠藤幹生に対し、それぞれ金一四〇万七三八八円及びこれらに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告小杉清及び同有限会社五十沢温泉湯元館は、各自、原告遠藤久美子に対し、金四二二万二一六四円、原告関田彩子及び同遠藤幹生に対し、それぞれ金二一一万一〇八二円及びこれらに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、これを二分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告らの負担とする。

六  この裁判は第一項ないし第三項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告らの請求

一  被告らは、各自、原告遠藤久美子(以下、「原告久美子」という。)に対し、金二二五四万三五七四円及びこれに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、各自、原告関田彩子(以下、「原告彩子」という。)及び同遠藤幹生(以下、「原告幹生」という。)に対し、それぞれ金一一二七万一七八七円及びこれらに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実及び証拠上優に認定できる事実

1  本件事故の発生

(一) 事故日時 平成六年四月三日午前七時三二分ころ

(二) 事故現場 新潟県南魚沼郡六日町大字一七四一番地先交差点

(三) 椎名車 普通乗用自動車(足立五二の三一六)

運転者 承継前被告亡椎名三男(以下、「三男」という。)

(四) 小杉車 大型乗用自動車(長岡さ四一三六)

保有者 被告有限会社五十沢温泉湯元館(以下、「被告湯元館」という。)

運転者 被告小杉清(以下、「被告小杉」という。)

(五) 事故態様 三男が、訴外亡遠藤松太郎(以下、「訴外松太郎」という。)を同乗させ、椎名車を運転して走行中、本件事故現場の信号機によつて交通整理の行われていない本件交差点に進入したところ、右方から小杉車が本件交差点内に進入してきたため、椎名車の右後部ドアー付近に小杉車の前部が衝突した結果、訴外松太郎は頭蓋骨粉砕骨折、多発肋骨骨折、肺挫傷等の傷害を負い、同日午前八時一五分、訴外松太郎は、右傷害により死亡した。

2  責任原因

(一) 被告椎名茂子(以下、「被告茂子」という。)、同椎名康夫(以下、「被告康夫」という。)、同椎名政一(以下、「被告政一」という。)及び同布施三枝子(以下、「被告三枝子」という。)

三男は、椎名車の保有者であるから、自動車損害賠償保障法三条により、損害を賠償する責任を負うところ、同人は、本訴継続中の平成七年八月一八日死亡した。被告茂子は、三男の妻、同康夫、同政一及び同三枝子はいずれも三男の子であり、同人の相続人であるから、被告茂子は二分の一、同康夫、同政一及び同三枝子は各六分の一ずつ、三男の損害賠償債務を相続した。

(二) 被告湯元館

被告湯元館は、小杉車の保有者であるから、自動車損害賠償保障法三条により、損害を賠償する責任を負う。

(三) 被告小杉

被告小杉は、小杉車を運転して本件交差点内に進入するに当たり、左方から進行してくる車両の動静を注視して進行すべきであるにもかかわらず、これを怠つて交差点内に進行し、本件事故を惹起した過失があるので、民法七〇九条により原告らに生じた損害を賠償すべき責任がある。

3  損害賠償請求権の相続

原告久美子は訴外松太郎の妻、原告彩子及び同幹生はいずれも訴外松太郎の子であり、同人の相続人であるから、原告久美子は二分の一、原告彩子及び同幹生は各二分の一ずつ、訴外松太郎の損害賠償請求権を相続した。

二  争点

1  訴外松太郎の逸失利益の算定に際し、訴外松太郎の画家としての収入を認めることが相当か

2  訴外松太郎の損害額の算定に際して、好意同乗者としてその損害額を減額すべきか否か

第三損害額の算定

一  訴外松太郎の損害

1  逸失利益 六〇三万八〇七五円

(一) 原告らは、

(1) 訴外松太郎は、本件事故時、訴外日本電信電話共済組合から退職年金を年間二九五万七一〇〇円を受給していたが、訴外松太郎が本件事故によつて死亡したため、年間一七六万五四〇〇円の遺族共済年金に変更された結果、年間一一九万一七〇〇円の収入を逸失した。また、訴外松太郎は、厚生年金通算老齢年金を年間六六万五一九六円受給していたが、訴外松太郎が本件事故によつて死亡したため、右厚生年金通算老齢年金を受給できなくなり、その結果、年間六六万五一九六円の収入を逸失した。訴外松太郎は、本件事故時七二歳であつたから、訴外松太郎は本件事故によつて死亡しなければ、平均余命の歳に達するまでの一一・四六年間、毎年、右の合計額である一八五万六八九六円の得べかりし利益を喪失した。

したがつて、訴外松太郎の死亡にともなう年金収入の減少による逸失利益は、右の一八五万六八九六円に生活費を三五パーセント控除し、一一年間のライプニツツ係数八・三〇六四を乗じた額である一〇〇二万五六七八円を下らない。

(2) 訴外松太郎は、本件事故時、画家として継続的に活動して収益を上げていたところ、所得の税務申告を行つていなかつたため、その実収入の確定は困難なものの、少なくとも平成二年賃金センサス第一巻第一表の産業計男子労働者学歴計平均賃金を一・〇三六倍するなどして算定した六八歳以上の平均給与月額である二八万五三〇〇円と同程度の収入があつたと認めるべきである。

したがつて、訴外松太郎の死亡にともなう画家としての収入の減少による逸失利益は、右二八万五三〇〇円に一二を乗じ、生活費を三五パーセント控除し、就労可能年数である六年間のライプニツツ係数五・〇七六を乗じた額である一一二九万五八一〇円を下らない。

(3) したがつて、訴外松太郎の死亡にともなう逸失利益は、(1)及び(2)の合計の二一三二万一四八八円である。

と主張するので、以下、検討する。

(二) 年金関係

(1) 甲三の一及び二、四ないし六、乙一一並びに弁論の全趣旨によれば、訴外松太郎は、本件事故時、満七二歳であり、退職年金として訴外日本電信電話共済組合から年間二九一万七五〇〇円、厚生年金通算老齢年金として年間六六万五一九六円(甲六及び弁論の全趣旨によれば、訴外松太郎は、二か月ごとに厚生年金通算老齢年金として一一万〇八六六円を受給していたと認められるので、右一一万〇八六六円に六を乗じた額)の各年金を受給していたこと、訴外松太郎の死亡に伴い、右退職年金は支給されなくなり、代わりに遺族年金として年間一七六万五四〇〇円が妻である原告久美子に支給されていることが認められる。

ところで、被告椎名茂子らは、右通算老齢厚生年金は、基礎年金拠出金の三分の一と事業執行費用は国が負担し、その余の部分は被保険者と事業者が半分ずつ負担することになつており、国民年金の上乗せ部分であるがら、その逸失利益性は否定されるべきであると主張する。

しかしながら、国民年金老齢基礎年金は、当該受給者に対して損失補償ないし生活保障を与えることを目的とするものであると共に、その者の収入に生計を依存している家族に対する関係においても、同一の機能を営むものと認められるから、その逸失利益性が肯定されるところ(最高裁平成元年オ第二九七号、同五年九月二一日第三小法廷判決)、厚生年金老齢通算年金も、国民年金老齢基礎年金と同様の目的と機能を有していると認められるので、その逸失利益性は肯定できると解するのが相当である。

(2) そして、原告らは、右退職年金と遺族共済年金の差額と厚生年金老齢通算年金の合算額の得べかりし利益を喪失したと主張しているところ、前記認定の事実によれば、退職年金二九一万七五〇〇円と遺族共済年金一七六万五四〇〇円の差額である一一五万二一〇〇円と厚生年金老齢通算年金六六万五一九六円の合計額は一八一万七二九六円となる。したがつて、訴外松太郎は、本件事故によつて、平均余命の歳に達するまでの期間、毎年、右の一八一万七二九六円の得べかりし利益を喪失したものと認められる。

(三) 画家としての収入について

(1) 甲七の一ないし四、八の一ないし三、九の一ないし三、一〇の一及び二、一一、一二の一及び二、一三の一及び二、一四の一及び二、一五の一及び二、一六の一及び二、一七の一ないし二六、一八、原告久美子本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、訴外松太郎は、訴外日本電信電話株式会社を定年退職後、訴外日本ケーブルドラム供給株式会社に再就職したが、平成元年一二月に同社を退職したこと、同社を退職後、間もなくして、東京都目黒区主催の展覧会で入選したため、そのころから、同区の絵画の会などで絵画を教え、その後は、毎月数回の絵画教室を開くようにもなつたこと、絵画教室によつて謝礼を受け取つていたこと、絵画教室は区の施設を借りて行うなどしており、使用料等が必要であつたこと、二年おきに絵画の個展を開き、その際、作品が売却されたこともあつたこと、訴外松太郎は、これらの収入については一度も税務申告を行つていなかつたこと、が認められる。

ところで、絵画教室の謝礼や絵画の売上額の証拠は、源泉徴収票や当時の訴外松太郎発行の領収書といつた本件訴訟と無関係に作成された書証ではなく、本件訴訟で立証するために、絵画の会や弟子が作成した書証しかないため、これらの書証と原告久美子本人尋問の結果だけで、訴外松太郎の絵画活動に伴う収入を確定できるか、疑問が残らないではない。しかしながら、仮に、これらの書証から訴外松太郎の絵画教室の謝礼や絵画の売上額が確定できるとすると、絵画教室の謝礼として認められるのは、毎年約六〇万円と平成四年から平成六年の三年間にわたる合計五二万円である。また、作品を売却して得た売上も、平成五年に合計二三四万円を得ていることが認められるが、原告久美子本人尋問の結果によれば、各作品は、少なくとも二年間にわたつて作成された作品を売却したものであるから、一年間では、最高でも、その半額の一一七万円となる。そして、訴外松太郎は、これらの収入については、税務申告を一切行つていなかつた上、原告久美子も訴外松太郎の絵画活動の詳細を把握していなかつたため、訴外松太郎が、これらの収入を得るために、どの程度の諸経費を支出していたかは、証拠上不明であり、その結果、訴外松太郎が、どの程度の所得を得ていたかは、証拠上、全く不明である。かえつて、右のとおり、訴外松太郎の収入が、概ね二〇〇万円程度であることからすれば、通常は、右と同程度の経費を要し、税務申告をするに足りるまでの所得は得ていなかつたため、訴外松太郎は、税務申告を行つていなかつた推認するのが合理的である。

しかも、訴外松太郎の絵画活動の内容、絵画教室を始めた経過、訴外松太郎が税務申告を行つていなかつたことに鑑みると、そもそも、訴外松太郎は、趣味として絵画活動を行つていたものであり、それによつて生計を立てるために行つていたものではない蓋然性が高い(絵画教室から提出された書証には、報酬ではなく、謝礼と記載され、また、所得税の源泉徴収もなされた形跡がうかがわれないのも、それ故と考えられる。)。したがつて、絵画活動による収入は、将来にわたり、確実、かつ、継続的に得ることのできる収入とまでは認め難く、慰謝料として斟酌するかはともかくとしても、逸失利益としては認め難いものである。

(2) よつて、訴外松太郎が、今後平均余命までの期間、画家として、継続的に、かつ、確実に、平成二年賃金センサス第一巻第一表の産業計男子労働者学歴計平均賃金を一・〇三六倍するなどして算定した六八歳以上の平均給与月額である二八万五三〇〇円に一二を乗じた額である年間三四二万三六〇〇円と同程度の所得を得ることができたとは認められず、他に、原告らの右主張を認めるに足りる証拠はないので、原告らの主張は採用できない。

(四) 以上の次第で、訴外松太郎の逸失利益は、右の年金減額分の一八一万七二九六円に、生活費を六〇パーセント控除し(前記のとおり、原告らは、生活費控除率は三五パーセントが相当であると主張するが、年金収入については、その性質上、生活費として費消する比率が高いと考えられるので、生活費控除率は六〇パーセントと認めるのが相当である。)、平均余命までの一一年間のライプニツツ係数八・三〇六四(原告主張のとおり)を乗じた額である金六〇三万八〇七五円と認められる。

2  慰謝料 一八〇〇万円

訴外松太郎の年齢、家族構成、訴外松太郎が、絵画教室を開いたり、スキーの大会に出場するなど、健康で未だ活発に活動していたこと、証拠上明確には確定し得ないものの、訴外松太郎が絵画活動で収入を得ていたこと等、証拠上認められる諸事情に鑑みると、本件における慰謝料は一八〇〇万円が相当と認められる。

3  治療費 五万〇五八〇円

甲二二の七ないし一一及び弁論の全趣旨によれば、訴外松太郎は、本件事故後、国民健康保険町立ゆきぐに大和総合病院に入院し、治療費として原告ら請求のとおり、少なくとも五万〇五八〇円を支出したことが認められる。

4  葬儀費用等 一二〇万円

本件と相当因果関係の認められる訴外松太郎の葬儀費用等は、合計一二〇万円と認めるのが相当である。

5  好意同乗者減額について

(一) 被告らは、「訴外松太郎は、スキー大会に参加するため、三男の運転で東京から本件事故現場まで到着し、三男の運転する椎名車に同乗して本件事故に遭遇したのであるから、共同の運行利益の元に椎名車に乗車していたこと、訴外松太郎は、椎名車に乗車している間、単に三男に運転をまかせるだけでなく、前方注視や運転者の疲労等に配慮する責任の一半を負つていたこと、訴外松太郎がシートベルトを装着していなかつたことに鑑みると、訴外松太郎の損害額の算定に際しては、好意同乗者としてその減額をすべきである。」と主張している。

(二) 前記争いのない事実の外、乙六ないし一〇、原告久美子本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、訴外松太郎は、以前からスキーの大会に参加しており、本件当時も、平成六年四月二日から新潟県内の六日町八海山スキー場で開催される八海山アルペン複合選手権大会に参加するため、六日町町内の八海会館に宿泊していた。訴外松太郎は、本件事故前日の四月二日にスキー競技に参加し、同日も右八海会館に宿泊した。そして本件事故当日、訴外松太郎は、三男が運転する椎名車の後部座席の運転席側に乗車して、午前七時三〇分ころ宿泊先を出発し、競技会場である六日町八海山スキー場に向かつた。そして、宿泊先を出発して間もなくの午前七時三二分ころ、本件事故現場にさしかかつたが、三男は、左右の十分な注視を欠き、かつ、減速はしたものの、一時停止標識にしたがつて一時停止しないまま、本件交差点に時速約三〇キロメートルで進入したところ、右方から進入してきた小杉車と椎名車が衝突し、後部座席に乗車していた訴外松太郎を死亡させたことが認められる。

以上の事実によれば、訴外松太郎は、無償で三男の運転する椎名車に自発的に乗車し、その結果本件事故に遭つたことが認められるが、訴外松太郎には、本件事故を誘発するなど、本件事故に繋がるような帰責事由は認められない。被告らは、訴外松太郎がシートベルトを装着していなかつたことを訴外松太郎の帰責事由として考慮すべきであると主張し、前掲各証拠によれば、本件事故時、訴外松太郎がシートベルトを装着していなかつたことが認められる。しかしながら、本件事故は、訴外松太郎が運転席側の後部座席に乗車していたところ、右方から直進してきた小杉車に衝突して、その反動で車外に放り出されたというものであり、訴外松太郎の右のような乗車の態様に鑑みると、本件では、訴外松太郎がシートベルトを着用していなかつたことを、その落ち度として斟酌するのは相当ではない。また、本件事故当時、訴外松太郎が椎名車に乗車を予定していたのは、宿泊所からスキー場までの短距離、短時間であるから、訴外松太郎は、椎名車の運転を三男に委ねていたと認められ、訴外松太郎が、三男と共に、椎名車の運転に関し、共同で注意義務を負担していた等の被告らが主張する事実は認められない。

(三) 以上の次第で、本件では、好意同乗者として、その損害額を減殺することは相当ではない。

6  損害合計 二五二八万八六五五円

二  損害てん補 一〇〇〇万円

原告らが、搭乗者傷害保険金一〇〇〇万円を受領したことは、当事者間に争いがないところ、原告らは、右の一〇〇〇万円については損害のてん補を受けたものと認めているので、原告らは、一〇〇〇万円の損害のてん補を受けたものと認める。

三  相続

右損害賠償請求権のうち、原告久美子が二分の一を、原告彩子及び同幹生が各四分の一ずつを、それぞれ相続したので、原告久美子の相続する額は七六四万四三ママ三二七円、原告彩子及び同幹生の相続する額は各三八二万二一六三円である。

四  弁護士費用

1  本件訴訟の難易度、審理の経過、認容額、その他、本件において認められる諸般の事情に鑑みると、弁護士費用は、原告久美子につき金八〇万円、原告彩子及び同幹生につき各金四〇万円が相当と認められる。

2  被告湯元館び同小杉は、右弁護士費用の遅延損害金については、本判決確定の日の翌日から起算されるべきであると主張するが、弁護士費用につき不法行為の加害者が負担すべき損害賠償債務も、当該不法行為の時に発生し、かつ、遅滞に陥ると解するのが相当であるから(最高裁昭和五五年オ第一一一三号同五八年九月六日第三小法廷判決・民集三七巻七号九〇一頁参照)、被告湯元館及び同小杉の主張は採用できない。

五  合計

1  原告久美子 八四四万四三二七円

2  原告彩子及び同幹生 四二二万二一六三円

第四被告らの訴訟承継

以上によれば、三男は、被告湯元館及び同小杉と連帯して、原告らに生じた右損害を賠償する責任を負うところ、同人は、本訴継続中の平成七年八月一八日に死亡し、被告茂子が二分の一、同康夫、同政一及び同三枝子が各六の一ずつ、三男の損害賠償債務を相続した。したがつて、被告茂子は、原告久美子に対して、四二二万二一六三円、原告彩子及び同幹生に対して、各二一一万一〇八一円、被告康失、同政一及び同三枝子は、原告久美子に対して、各一四〇万七三八七円、原告彩子及び同幹生に対して、各七〇万三六九四円ずつの金員を、それぞれ被告湯元館及び同小杉と連帯して支払うべき責任を負うと認められる。

その結果、被告らが連帯して負担する金額は、以下のとおりとなる。

一  被告ら全員で連帯して負担する金額

最も低額の被告康夫、同政一及び同三枝子が負担すべき金額であるから、原告久美子に対しては、金一四〇万七三八七円、原告彩子及び同幹生に対しては、それぞれ金七〇万三六九三円

二  被告小杉、同湯元館及び同茂子で連帯して負担する金額

被告茂子が連帯して負担すべき金額から、被告康夫、同政一及び同三枝子が連帯して負担する金額を減じた金額であるから、原告久美子に対しては、金二八一万四七七六円、原告彩子及び同幹生に対しては、金一四〇万七三八八円

三  被告小杉及び同湯元館が両名で連帯して負担する金額

原告久美子、同彩子及び同幹生の損害額から被告茂子が連帯して負担すべき金額を減じた金額であるから、原告久美子に対しては、金四二二万二一六四円、原告彩子及び同幹生に対しては、金二一一万一〇八二円

第五結論

以上の次第で、原告久美子の本訴請求は、被告らに対し、各自、金一四〇万七三八七円及びこれに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを、被告小杉、同湯元館及び同茂子に対し、各自、金二八一万四七七六円及びこれに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを、被告小杉及び同湯元館に対し、各自、金四二二万二一六四円及びこれに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払いを求める限度で理由があり、原告彩子及び同幹生の本訴請求は、被告らに対し、各自、金七〇万三六九三円及びこれらに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを、被告小杉、同湯元館及び同茂子に対し、各自、金一四〇万七三八八円及びこれらに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを、被告小杉及び同湯元館に対し、各自、金二一一万一〇八二円及びこれらに対する平成六年四月三日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを、それぞれ求める限度で理由がある。

(裁判官 堺充廣)

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